なんかこのところうっすらと、フランスが恋しくなっている。4年行ってないのかな。
別に行かなくてもいいじゃんと思う一方で、やっぱり恋しいこの気持ちはなんだろう。
・・・・などと考えていたところなので、どなたかの投稿でお勧めされていた映画『パリタクシー』(原題はUne belle course)でも観て、せめて美しいパリに行った気分になろ〜!と思ったが、
日本での紹介文にあるような生っちょろい「笑いと感動」なんかでは済まなかった。
https://movies.shochiku.co.jp/paristaxi/
どの視点から見ても文句のつけようがない完璧な映画。
フランスらしい会話のやり取りに途中から泣きっぱなしに泣き続けてしまい、今も余韻に浸っている。パリが美しいから、余計に泣けた。
女性なら誰でも、これを見て何かを感じずにはいられないんじゃないかな。
特に我々クラスの年代なら絶対に見るべき作品のひとつだと思う。
あまり内容に触れたくはないが、老人ホーム入所が決まった92歳の女性が、タクシーを呼んでホームまでの道のりを旅するわけだが、そこで語られる彼女の人生は、そのまま「女性100年史」と言えると思った。
子供時代に戦争があり、父親は占領してきたドイツ軍に殺され、自らは解放軍である米兵と恋に落ちるが、米兵は帰国し幼子だけが残った。
連れ子を抱えてフランス人と結婚するが、アルコール依存症の上に殴る蹴る、宝物の一人息子にまで手を挙げるの暴力の日々。そんなことはあちこちの女性が経験していたことだが当時は離婚するケースは稀だった。
女性の「人権」は軽んじられていた時代、息子を守るために亭主に仕打ちをするわけだが、主張は認められず禁固刑に。
出所すると「罪人の息子として生きてきた俺の気持ちがわかるか」と言い残して報道カメラマンとなった息子はベトナム戦争の取材に行くが、サイゴンで撃たれて死ぬ。
しかしこの女性の口から、社会や誰かを恨む言葉は一言も出てこない。パリの人たちと、今は絶滅してしまった「江戸っ子」に共通点を見出すポイントでもあるなと感じた。
ああ、「現代」という地点にたどり着くまでの歴史の中で、全世界の、時代を生き抜いてきた、また生き抜くこと叶わなかった女性たち、母親たちがどんなに辛酸を舐めてきたことだろう、、、、そしてすべての生き残った者たちのなんと尊いことよ、、、、、と感じたら胸が詰まっていつまでも涙が止まらなかった。
すべての女性に感謝したい。
自分の母、2人の祖母、そのまた親、親の親の親の親、、、、、と連綿とつながる糸があり、我々がここに生きている。その糸を手繰っていけば、誰でももれなく超古代まで遡れる。
時代時代にどんなことがあったか想像すらつかないが、とにかくラッキーにせよ、必死だったにせよ、ずる賢かったにせよ、生き抜いてきた人たちの、わたしたちは末裔である。
どんな人もみな美しく、尊いと思う。
人類の過去のすべてに感謝の気持ちを向けたい。
いつのどなたか知りませんけれど、どなた様も生き残ってくれてありがとう。
それにしてもパリは美しく、ヴァンドーム広場の言葉にできない「凄さ」よ。
ああ、もしフランスに生まれていたら、わたしは「標準的な普通のフランス人」として、標準的な普通の人生を送ったんだろうか、、、、という愚にもつかない疑問だけは一生頭から離れないんだろうなあ。
そんなにあれなら行こうかな、、、と思って今検索したら、相変わらず出国はわけもなく、帰国のために検査が必要とか。アホくさ。そういうのが本当にめんどくさいので萎えてしまう。
脳内で、ルルドに広がるあまりにも清浄な空気を再生しよう。