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この社会システムに命を差し出す価値なんてない


前にも書いたけど、わたし病院に見舞いに行くときは、できるだけハデにしていこうと決めている。

今日、友達の病室に行ったら

「相変わらずデーハーだねーーーーーーーーーーー」

と開口一番言われて、

成功した!と思ったw

「そらそうだよ。あんたの気分が落ち込まないように考えてきたんだからね」と言ってやった。

 

変わり果てた彼女の姿を見て、あらためて「薬は恐ろしい」と思った。

わたしは時が来たら、あらためてこのことをまとめようと思う。

それが彼女の死を無駄にしないことだと思う。

 

「そういう考え方をしてると大病するよ!」の見本のような彼女だが、

もはや生命の灯火が消えようとしている。

どこかで、気付くべきだったし、長い付き合いの中で、気付かせようと話は何度もした。

けれど彼女は持ち前の負けん気と上昇志向だけをエンジンに、屈することがなかった。

人には「正しく降参する」ということが必要なのだが、白旗を上げる術を持たなかった。

そんな白旗は早く上げた者勝ちで、むしろ敗北とは真逆のベクトルなのだが、「裏の裏はオモテ」ということが、彼女には理解できなかった。

馬力と根性だけを頼りに階段を昇っても、その先に達成感と自由を得られるかといえば、そうではなく、

高い年収と引き換えに、結果彼女は命を差し出し、おまけにそれは治療費に消えた。

「どうだった?今回の人生は」と聞いたら

「ダメだったね」と彼女は答えた。

ダメじゃないじゃん。

いやダメだったんだよ。

そんな会話が交わされて、「何かが違っていたんだよ」と真剣な顔で首をひねった。

「死ぬ前に、ねえさんにこの話ができてよかった。他の人には言えない。この話ができてよかった」と彼女は繰り返した。

「ちょっとやり過ぎたな」と言ったら

「やり過ぎたね」と返ってきた。

バカだよ。あんたはバカだよ。

でもなぜか、清々しいのはどうしてだろう。

サバサバした、あんたの人徳だよ。

それはやっぱり、すごいことだ。

最後まで、一切変わらないスタイルが、あんたらしくてむしろ安心したよ。

だからわたしは、そのたったひとつのモチベーションにこだわった生き様を、讃えようと思う。

だけど、それにしたって寂しいじゃねえか、バカ!

 

田舎を捨てて東京に出て、絶対に成功しなければ意味がない、と思い込む地方出身の気持ちは、能天気な鎌倉育ちのわたしには絶対にわからない。

「パターン」として理解はしても、そんな実感を持ちようがないから、想像することすらできない。

けれども、それがどれだけ強いモチベーションなのかは、多くの「パターンサンプル」を見ればわかる。

実際、「成功」に対する執着の強さは、世の多くの成功を生んできただろう。

でも、もはやそれは奏功することはなく、プレッシャーはそのままその人を蝕んでいく。

そして強制終了と相成る。

それでも当人が満足いくならば良い。

でも、その人を愛した周囲の人間を、悲しみのどん底に叩き落とす。

 

 

ここには2つの話があって、

ひとつは人の奥底に潜む、暗黒の沼のような闇。

二度と開けない鍵をして、人には見せないようにしてきたが、それはモチベーションでもあり、弾薬庫でもあった。

もうひとつは、医療というもの。

みんな、医療システムというものを知らなすぎる。

知らないのは当たり前で、誰も現実を語らないからだ。

語らないことの奥底には、死をタブー視する土壌、死について語ることがフラットではない、できれば避けたい話題だから、というのがある。

誰も、自分が病気になるなんて考えもせず生き、病気になったらどういう手順のベルトコンベアに乗せられるかなど、知りたくもないのだ。

そして当事者になって初めて、命のろうそくが短くなって初めて

「え?」ということに気付くわけである。

 

どちらも、「誰が悪い」という話ではない。

心の奥に闇を抱えることも、成功を目指して無理をすることも「悪い」ことではない。

医療を盲信することも、医療に従事することも、「悪い」ということではない。

ただ、すべてが「仕組み」の中に成り立っている。

この社会にものすごい精度で構築された、不安ベースの経済システムの中の仕組みに過ぎない。それはもはや生態系だ。エコシステムだ。

 

彼女が転職して獲得した高収入は、それが製薬会社だったから、

ということも、まあ、わたしにはかなりやりきれない話ではある。

 

悲しいけれど、泣く気は消えた。

バカめ。

「頑張らない」ということができなかった、あんたのことがいつまでも大好きだよ。

 

 

 

 

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