オサナイカオリノシゴト

KAORISSIMA ENERGY WORKS

幽世(かくりよ)と現世(うつしよ)、あるいは全てにおける境界というもの

その後の世界を作るために


過日のこと、「まだ青春」と言って差し支えないぐらいに若く、かつ聡明なお嬢ちゃんを担当させていただいた。

 

この世の世界と、彼岸つまりあの世の世界の境界線が極めて曖昧で、ふとした拍子に向こう側の世界に行ってしまう。

その世界でどんどん物語を紡いでいける。

向こう側の世界におけるアドベンチャーは、一般の人が想像するのとはおそらく違っているはずで、この方にとってはそれがリアルで楽しく愉快だったりもするのだろうと察したので、どんな世界かを聞くことすらしなかった。

わたしには、まあわかる。

なぜならわたし自身もそういう因子を多分に持った子だったし、今でもうっかりすると時空間を超えてしまうので、「あれ?果たして自分はどこの世界に生きてるのかしら?」ということが起きる。因縁探偵の新規の受付をしばらく停止していたのはそんな理由からなわけだが。

ま、しかし。

このような素養があると、こちらの世界が辛く感じたら、あちらに行ってしまう、ということが常になってくる。(境界線喪失の発動、とでも仮に名付けておく)

あまりあちらに行きすぎると、こちらで生きるのがますます難しくなってくる。あちら要素が強めになれば、身体的にも不都合が発生する。

泉鏡花が著したように、夢と同じで、誰でもちょいちょいは波にのまれてそっちに行くけど、こっちに戻ってくるから生きている。戻らなければそれは夢ではなくて、、、、、

我々はこちらで生きるために生きているから、それではかなりよろしくない。

それで心身のバランスが崩れてしまうわけだが、医者的には「鬱」などと簡単に診断を下すことになるだろう。そして本人はその診断に軽くショックを受けたりもするだろう。

またそれを、希死念慮として捉えてしまうと、また厄介なことになったりもする。

(・・・・・と書いていて、そうだ、泉鏡花のような作家は間違いなく境界線の曖昧な人であって、そうでなければあんな作品群は書けないんだからなーと改めて納得しているナウ)

 

要はつまり、兎にも角にも、この世への接地を強くすることが何より大切で、

損傷したエネルギー体の修復やら何やらが急務になってくる。

そのためには自己受容、ここまでの自らの歩みの肯定、自分自身への労いなんかが必須だし、母親との絆の結び直し作業も必要だ。

大丈夫。そんなことはいずれ起きる。必ず起きる。またいずれその豊かな才能を開花させるようになるだろう。

だから絶対に心配いらない。

 

それから若いということは、良い意味での諦めに達する経験量にまだ足りていない、というのはあって、だからこそ辛い。

世の中の他の人々も、自分と同じように豊かな感性を持っている、視野レンジの広さを持っている、時空間概念の自在さを持っている「わけではない」んだということをまだ知らない。

そこもまた自分と他者に境界線があることを、経験的にはっきりと掴めていないんだなー、、、ということも、

そしてそんなことを解説してくれる人も、今までいなかったんだなー(普通、いないよ)、、、、、わたしはいつそれを知ったかなー、、、などと思いを巡らしてみたりした。

境界線が曖昧だと、何かと苦労は多いけれど、後になったら味わい深いものになるよ。。。。。。と心の中で思った。

 

 

だけど、このセッションの最後に、彼女は重大な質問をわたしに投げかけた。

いろいろとなんとなくわかってよかったけれど、しかし正直にひとつわからないのは、「なぜ、あちらの世界に行ってはいけないのか」という点です、と言われた。

わたしはこれを真剣に受け止めた。

このシンプルにして根元的な疑問に対して、誰が正当な答えを返せるだろう。

しかしこのように聡明な若者に対して、「そんなことは考えすぎだよ」とか「考えたって仕方がないよ」とか、「理由なんかないよ」とか、

答えを返せないからこその適当な繕いは無意味どころか、害になる恐れもあるし、何よりわたしという人間への信頼度に関わる、信頼が成り立たなければ施術も奏功しないとも思ったから、

わたし史上でも最も濃密な思考時間を5秒ほど過ごして、わたしなりの回答をさせてもらった。

今思うと、次回までに考えてくる宿題にさせて欲しいと言ってもよかったものだが、5秒で回答できた自分を褒め称えたいと思った。

それが掲題の件で、どう答えたかは秘密だけれど、「ああ、、、、、」とうっすらでも納得してくれたことは、及第点をもらった気分になった。

でももっとビシッとした答えが出るかもしれず、引き続き考えていこうと思う。

 

彼女ぐらいの歳の頃、何か疑問を口にして、それが自分にはわからないことだった場合テキトーなことを返してくる大人は嫌いだったし、説教めいたことを言って丸めこもうとする大人には失望を感じた。

またある種の疑問は「そんなの考えたこともない」と言われると傷ついたりもした。

自分はそういう大人の一人になりたくないと思ってきたわけだから、いまや腕試しの時期が来たんだなーという気分。

そしてなんだかジリジリする青春の時間の、とうに忘れてしまったある一側面を思い出させてもらった。

若い子の悩みはすべて尊いと思う。

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